GtG:筋肉ではなく神経を鍛える

以前は筋トレをしていた。最初は一般的な自重トレ。しかし、回数を重ねても筋肉が付かないという話を聞いて、次はダンベルを使って鍛え始めた。ところが、これをやり出すと際限がない。それでおもりを背負ってざっくり全体を鍛えるようにした。どんどん重さがエスカレートしていく。土曜日にやったら日曜日は筋肉痛で動けない。月曜、火曜くらいになってようやく身体の痛みが引いて、すると驚くほど身体が軽くなっていることに気付く。でも木曜にやったら金曜は動けないし、金曜には疲れ果ててもう筋トレ自体ができない。結局また土曜にやって同じことの繰り返し。これでは意味がないと思って、最後は自重トレに帰ってきたが、とうとうアホらしくなってやめてしまった。

年齢を重ねて衰えていく一方なのに、筋トレの宿命として負荷が大きくなっていき、どこかで身体に無理が生じて、少し休むとすぐに身体が元通り(筋トレ以前)になってしまう。このサイクルがアホらしくなってしまったのだった。

やり方の問題だと他のトレーニーは言うだろうけど、色々やってみて、そもそも自分にそんなに筋肉が必要なのかという疑問を持った。そして、人にはそれぞれ必要な筋肉量というのがあって、不必要な荷物を背負うとどこかで歪みが生まれてしまうのだ、という結論に至った。それ以来、筋トレはしていな――かったのだが……。

前置きが長くなったが、ここで一つ筋トレを紹介したい。それがGtGだ。"Grease the Groove"という。種目は何でもいいので、次のルールで取り組む。①限界の半分以下の(疲れが残らない)回数を1セットやる。②一日に何セットかやる。③セットとセットの間は1時間以上あける。

私はこれをトイレに行くたびにやると決めて、イス軸法で体軸を整えてから、片手腕立て1~2回と片足スクワット5回に取り組んでいる。高負荷低回数で筋肥大を狙うやり方とも、低負荷高回数で筋持久力増大を目指すやり方とも違う。じゃあ何が鍛えられるのか、というとそれはおそらく神経だと思う。

事故や病気などでリハビリをしている人たちがいる。動かない部位を毎日少しずつ動かしていくうちに機能が回復していく。身体の神経と脳が繋がっていくのだろう。あれを筋トレでやろうというわけだ。私たちの取り組むテーマにぴったりだとは思わないか。

私が特に気に入っているのは「追い込まない」というところだ。筋トレは最強のソリューションといって、最近では猫も杓子も筋トレにいそしんでいるようだ。まったく否定するつもりはない(否定されてメチャクチャ怒っている人をリアルでもネットでもしょっちゅう見かける)。

ただ、筋トレは効率よく疲れる練習をしているようなところがあると思う。筋肉を痛めつけ、一度壊して、強くする。それはかさぶたをどんどん分厚くするような営みではないか。我々は地球人であってサイヤ人ではない。限界はすぐにやってくるだろう。筋トレは限界を知らずにいられる特権を持った若者たちに任せて、私たちは粛々と神経を育てていきたい。